老人保健施設は現代の姥捨て山

日本は世界一の長寿国だが、同時に世界一寝たきり老人の多い国でもある。
そして、認知症の高齢者の約半数は寝たきりであるという統計がある。

認知症が増えた理由は、日本人の平均寿命が長くなったこと、薬漬け医療にも原因があるだろう。
例えば、血圧を下げる薬(降圧剤)の長期使用は、認知症の大きな引き金になる。

認知症を治す薬はない。にもかかわらず、日本の医療現場では大抵の場合、認知症になると薬が投与されるのだ。
認知症で無気力状態になっている患者にはテンションを上げる薬が投与され、逆に精神不安定になっている患者にはテンションを下げる薬が投与される。
いずれにしても高齢者に対する薬の投与はリスクが大きく、様々な副作用が生じてくるのだ。

認知症の初期の段階では、まだ正常な本人の意識がかなり残っている。
この時期には、思い通りにいかなくなった自分自身に対して苛立ちを覚えたり、周りの介護を受けることに対する羞恥心によって、情緒不安定になることがよくある。
この時期は、高齢者の介護をする側からいえば、介護がしにくい時期でもある。
その対策として、介護スタッフが仕事をしやすくするために精神安定剤が投与される。
高齢者介護の現場では、薬はあくまでも本人のためではなく、介護をする側を楽にするために使用されるのだ。

ことに老人ホームと比べて介護スタッフの少ない老人保健施設(老健)の現場などでは、そのような薬が多めに使用される。
そうすると、薬の副作用で足腰がどんどん弱くなっていく。
薬の大量投与をさらに継続すれば、最終的には寝たきりになってしまう。日本が寝たきり老人大国になっしまった大きな理由がここにある。

以下は、ある老人保健施設の施設長(医師)の話である。

「薬の副作用は必ずあります。認知症の薬に限らず、今の薬は若い人の体力を基準にして作られているので高齢者には強すぎるのです。
施設にとって最もリスクが高いのは、薬の影響で本人の足腰がふらつき始めてきた時です。
下手に転倒事故でも起こされるよりは、いっその事、このタイミングで薬をさらに増やして早く寝たきり状態になってもらったほうがいいというのが施設側の本音です。
経営的に言って、認知症の患者さんひとりひとりに対してきちんと目配りをすることができるほど、介護スタッフの数を増やすことはできません。
だから、薬でフォローするしかない。ここが、今の福祉行政の問題点です。
もし家族の方が、薬の副作用がかわいそうだと言うのならば、自宅介護に切り替えてもらうしかありません。
もし不満があれば、施設に対してではなく行政に対して皆で声を上げるべきです。」

薬の副作用に期待をして、生きながらにしてその人の人生を終わらせる、現代の姥捨て山。
これが高齢者福祉現場の実態である。